現地法人の維持コストについて
リスク管理以外にも、現地法人のデメリットとしては、些少なことかもしれませんが、その維持コストがあります。
子会社とはいえ、現地法人は独立した法人格を持つわけですから、単独の財務諸表も準備しなければならず、毎年の決算・税務申告書を承認し取締役・執行役員の改選と指名をする取締役会の議事録・株主総会の決議録をきちんととって、いわゆる corporate formality を保たねばなりません。まずこれは結構手間暇かかりますし、弁護士事務所に依頼すれば1~2時間位の fee はすぐかかってしまいます。弁護士事務所に依頼せずに適当に draft を作ればいいじゃないか、と言う方もいらっしゃいますが、決議の内容によっては Delaware のSection 144 や California の Section 310 に引っかかってちょっと複雑なものもあるので、きちんとやらないと決議自体が無効になったり、あるいは必要な決議がなされていなかったり、ということになるのはしょっちゅうです。
決議書類だけでなく、単独の財務諸表を作成するのも、子会社で経理担当者を雇用するか、会計事務所に依頼するかしなければならず、結構面倒でコストがかかります。やっと財務諸表ができたら、今度はそれをもとにして税務申告書を作成しなければなりません。これも数千ドルのコストがかかります。
もし California corporation でなく、Delaware corporation として設立してあれば、Delaware 州のFranchise Tax Report の作成と filing 及び Delaware 州の Franchise Tax の支払も必要です。そしてやっと終わったと思う頃に小さなお葉書が California 州の Secretary of State から届き、Statement of Information の filing が delinquent (遅延)だと言われて慌てふためいたことのある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?あるいは取引先から、「Secretary of State の website で御社の status が Suspended になっている」と言われてびっくり仰天、というご経験のある方も中にはいらっしゃると思います。
ホンの数人の従業員が勤務し、実はカスタマーサポート・マーケティング・パブリックリレーションズ等の非常に限られた機能しか持たない現地法人なのに、これだけのことに留意しながら本来業務を執り行ってゆくというのは結構疲れると思いませんか?
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このコラムは、一般的な事例における筆者の経験を読者の皆様と共有するものであり、特定の事実関係に基く法解釈をご説明するpractice of law (法律相談行為)となるものではありません。従いまして、読者の方々と筆者との間にattorney-client関係を形成することは全く意図しておらず、内容についてご興味があり、更なるご説明をご希望の場合には、まずattorney-client関係の条件等についてご相談することになりますことをご了解ください。