米国の永住権 (Green Card) と市民権 (Citizenship) について
永住権 (Immigrant Visa: いわゆるGreen Card) と市民権 (Citizenship)の違いについて時々人から尋ねられるんですが、今回はそれについて。
一般的によく知られているのは、Citizenshipを持つ人と結婚すると、Green Cardを取得する資格を得られるということで、しかもそのGreen Cardは順番待ちすることなく、すぐに取得できる、ということです。このGreen Card取得資格は非常に例外的な扱いで、通常はVisa-Waiver (いわゆるESTA)で90日間の短期滞在目的で入国した場合は他のvisaに米国内では切り替えられず、一旦本国に戻ってvisaを取得し直してから再入国しなければなりませんが、Citizenと結婚してGreen Cardを取得した場合には、米国内にとどまったままでvisa種別の切替ができます。
Visa Waiverの期限が切れて不法に居残りをした場合でも、Citizenと結婚してGreen Cardを取得した場合にはお咎めなくGreen Card保持者という扱いに切り替えてもらえます。Green Card保持者と結婚しても、Green Cardを取得する資格を得られるということでは同じですが、Citizenとの結婚とは異なり、Green Cardは即刻発行されるわけではなく、年間発行枠の制限を受けて何年間も順番待ちすることになります。Visa waiverで入国していれば、その滞在期間を延長するのは基本的に不可能で、Green Cardが発行されるまで国外で待機するか、何らかのvisaを持って合法滞在する資格がないと、将来せっかくGreen Cardが認められても、visa waiverの違反で入国禁止措置を受けることになってしまいます。
これ以外によく耳にするCitizenshipを取得すべき理由というのには、Estate Tax (遺産税)があります。
夫婦のうち、相手に先立たれた方がCitizenshipを持たないGreen Card保持者であった場合、Estate Taxがかかって沢山税金をとられてしまう、ということだそうです。それを聞く度に、「世の中の方々は皆さん沢山お金を持っておられるんだなあ」と感服します。だって、2015年のEstate Taxのexemption (免税限度額)は確か$5,430,000で、それ以上の遺産がないとEstate Taxはかからないし、しかもCaliforniaはcommunity property州ですから、夫婦の資産は50%ずつの保有とみなされますので、$5,430,000以上の遺産額ということは夫婦合わせて$10,860,000の資産をお持ちということになります。
確かに、夫婦のうちCitizenでない方が残られた場合、Citizenなら使える、金額無制限のMarital Creditは使えませんが、$5,430,000のexemption (正しくはUnified Credit)は使えますから、それを超えない限り、Marital Creditが使えなくとも特に問題はないと思うんですが…?
(これは法律に関するアドバイスではありません。質問がある場合、あるいはもっと詳しく知りたい、という場合は弁護士にお尋ねください。)
このコラムは、一般的な事例における筆者の経験を読者の皆様と共有するものであり、特定の事実関係に基く法解釈をご説明するpractice of law (法律相談行為)となるものではありません。従いまして、読者の方々と筆者との間にattorney-client関係を形成することは全く意図しておらず、内容についてご興味があり、更なるご説明をご希望の場合には、まずattorney-client関係の条件等についてご相談することになりますことをご了解ください。