Fiduciary Duty (善管注意義務) とは何か?
米国の法律では非常に頻繁に出てくる用語であるのに、その日本語の訳語のないものがあって困ることがあります。「Due Process of Law」もそのひとつですが、これは米国憲法上の概念なので、刑事案件を扱わない私はあんまり仕事では遭遇しません。(余談ですが、米国憲法って、国民を政府から守るためにあるって、ご存知ですか?)
私が仕事でよく遭遇するのは、「Fiduciary Duty」という用語で、よく「善管注意義務」と訳されているのを見ますが、「Fiduciary Duty」には2つあって、「Duty of Care」と「Duty of Loyalty」とに分かれ、Duty of Careというのは「同様のポジションにある賢明な方が選択するであろうという方法で奉仕する」ということですので、これに「善管注意義務」は対応しますが、「Duty of Loyalty」には対応していません。
「Duty of Loyalty」というのは、「自分の利益を後回しにしてでも忠実に義務を果たす」ということで、例えばFamily Lawの世界では、親は未成年の子にFiduciary Dutyを負っているので、自分の身の危険をかえりみずに子の安全を守る、というのは、法の目から見れば当然のこと、という訳です。
ビジネスの世界で言えば、会社(corporation)の役員(directors)は、株主全員(自分の持ち株の分だけではありません)に個人的にFiduciary Dutyを負っているので、自分の役員としての地位を利用して自分の身内と会社との取引をして会社に損失をもたらすと、その役員個人に株主から損害賠償請求ができます。日本にお住まいの方が、不動産投資コンサルタントに誘われて米国の不動産投資物件を購入され、大損してしまったという話をよく聞きますが、このような場合、このコンサルタントが不動産業のライセンスを持っていれば、クライアントにFiduciary Dutyを負うので、大損するような物件はお勧めしない「はず」です。
米国の弁護士もクライアントにFiduciary Dutyを負いますので、私も自分の利益を後回しにしてクライアントの方々にご奉仕しております。でも、そんなFiduciary DutyやDuty of Loyaltyの話は日本ではあまり聞いたことがありません。それとも私がもうアメリカが長いので知らないだけで、実はちゃんとそういう概念はあるのでしょうか?
(これは法律に関するアドバイスではありません。質問がある場合、あるいはもっと詳しく知りたい、という場合は弁護士にお尋ねください。)
このコラムは、一般的な事例における筆者の経験を読者の皆様と共有するものであり、特定の事実関係に基く法解釈をご説明するpractice of law (法律相談行為)となるものではありません。従いまして、読者の方々と筆者との間にattorney-client関係を形成することは全く意図しておらず、内容についてご興味があり、更なるご説明をご希望の場合には、まずattorney-client関係の条件等についてご相談することになりますことをご了解ください。